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時空温泉1974-2074

時空温泉1974-2074

2024年制作
展示場所:地獄温泉ミュージアム
撮影:橋本大

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時空温泉1974-2074:ナショナル光る塔の下、人間達があちらこちらで呼吸する。浮世の噺を吸いこんで、湯気がもぅと昇り立つ。空に浮かびて雲となり、今日も別府に雨が降る。荘厳に埋まる岩壁の中、雨はジウジウと流れてゆく。まっかな熱塊が一切を神聖にしてくれる。あゝ50年が経つよ。血脈の熱水が噴き上がるよ。人間を味わい尽くした湯の中に、我らは再び肌を浸す。ネオンの無い塔の下、人間達があちらこちらで呼吸する。浮世の噺を吸いこんで、湯気がもぅと昇り立つ。空に浮かびて雲となり、今日も別府に雨が降る。


「時空温泉1974-2074」とは、
今回、別府のことを調べていく中で、私たちが特に惹きつけられたのは「50 年の時を越えて、温泉がつくられる」という別府特有の時間の流れである。1974 年に降った雨水が、地下深く染み込み、さまざまな物を溶かし、形を変えて2024 年の今、温泉として湧き出している。そして、今空から降り注ぐ雨水は、2074 年に温泉として再会できる。『壮大で夢幻的な美しいタイムカプセル』のイメージが私たちの脳裏に浮かんだ。「時空温泉1974-2074」とは、人々が過去未来に思いを馳せ、別府について思考する事を促すための美術装置である。
浴槽をタイムカプセルに見立て、その周囲に子どもの裸像を配置することで、会場全体を不可思議な温泉浴場へと変貌させる。浴槽内には湯の代わりに絵画を描き、中央には本物の温泉を展示する。この温泉は、子どもたちとともに別府・鉄輪の町を練り歩き、集めた湯である。湯の一部は、温泉の泉源地「伽藍岳」に放流した。つまり、この湯は、現在(2024 年)の別府の温泉であると同時に、過去(1974 年)の別府の雨水であり、未来(2074 年)に湧き出る別府温泉の元となる。私たちはこの湯を通して、過去・現在・未来の別府の文化風土を同時に感じることができるのだ。
50 年後、この湯を集めた子どもたちは再び別府の地に戻り、タイムカプセルを開けるように、自分たちで作り出した温泉に浸かる。2074 年に、この展覧会は真に完成する。

2024年4月7日 ザ・キャビンカンパニー 阿部健太朗・吉岡紗希