大絵本美術展「童堂賛歌」
2024-2025年開催
巡回場所:平塚市美術館、足利市立美術館、千葉市美術館、大分県立美術館
撮影:吉森慎之介
ザ・キャビンカンパニー結成十五年の集大成となる初の大規模個展。結成当初から2024年までの作品を一様に展示すると共に、全作品の根底に流れる「童」と「堂」という概念を、展示室全体を使った詩と美術によるインスタレーションで、自らの叙情詩的絵本として表現する。
『原始の力に満ち満ちて、あらゆる価値を溶解し、
秩序無く、唐突で、美しく、恐ろしく、滑稽で、神秘で、不可思議で、
そんなものがドウドウと流れる、川のような心底歌を、
どうにか形にしてみたいと思った』
『童』
「なんだこれは」と今まで頭の中に埋まってきた全ての思考を忘却させ、引き込まれる瞬間が好きだ。少年自然の家で見た銀粉を散らしたような星月夜。コロラド高原に続いていたオレンジとブルーの地平線。神が創った宇宙の事物を観ていると、時折それは訪れる。私達が創りたいものは、まさに「その瞬間」なのだ。しかし、ちっぽけな人間である私達がどうして、神が産んだ宇宙と同等のエネルギーを表現できようか。そのような事を脳味噌の中で、ぐるんぐるんと考える。そしてある日、啓示を得た。滑り台を飽きる事なく何時間も滑り続ける子どもを観て、川の流れを観た。娘が誕生した刹那、一糸纏わず泣き叫ぶその姿に、火山の噴火を観た。知識・経験の無い幼い子どもは制御の効かぬ宇宙そのものであり、それが故にエネルギーに満ち満ちている。彼らは常に「その瞬間」を生きている。尊さ、儚さ、憧れの念を込めて、私達は彼らを、自身の作品の根幹に据えた。私達にとって童子を描き創ることは、宇宙を創造することに他ならない。
『堂』
堂とは入れ物を意味する。神を祀れば聖堂。仏を祀れば御堂。本屋も薬屋もお菓子屋も堂を看板に掲げる店は多い。堂は人も意味も思想も宗教も超えて万物を受け入れる広大な言葉である。そして私達も常々そのようにありたいと思っている。断定せず、偏向せず、複雑なものを複雑なまま正直に受け入れたい。価値概念は時代と共に、常に移ろい変化してゆくから、今日観ているものが、明日も同じように観えるとは限らない。であるなら全てを疑い、全てを信じ、ごちゃまぜにして飲み込みたいと思う。矛盾・対立・差別の一切を溶かし、万物を入れ込む巨大で強靭な堂のような胃袋。その中で蓄積され混ざり合ったドロドロとした混沌。この混沌を自身の身体を通して産み落とすことが、私達の考える芸術であり唯一の真理である。
童堂賛歌のための映像作品
(制作:CORNER+KOO-KI)