
休校書店 メコチャン
2025年制作
展示場所:瀬戸内国際芸術祭2025(女木島)
協力:(旧)瀬居小学校 /(旧)石城西部小学校 / 竹田市立図書館 / 香川県立図書館





ゆうやけに よりそって
ふねが みなとへはいる
あのこが かえってきた
むかえるは モアイぞう
りょうしさんの こえで
おかえりって きこえる
ランドセルは ゆらゆら
ほんはうたう コトコト
うみのかぜは いつでも
みつあみを つかまえる
みちになった ベリーは
くちのなかで すっぱい
あのかどを まがったら
おうちのもんは そこに
よしよし だいてくれる
しまは うかぶゆりかご
あしたも またあのこは
だいいちびんの ふねに
ひとりでのって すすむ
あさやけに てらされて
【メコチャン】
女木島の人口は約100人。島唯一の小学校「女木小学校」が2005年に休校となり、現在島で暮らしている小学生は1 人だけです。本作品では、その小学生をモデルに「メコチャン」というキャラクターを創作し、彼女の暮らしをインスタレーションで表現しました。メコチャンは、これから土に根を張り、お日さまに向かって育って行く新芽のようです。島のあらゆるものから養分を吸収して大きく育っています。メコチャンは、毎朝、船に乗り、高松の小学校にひとりで登校します。登下校の道はオオテに囲われ草花が生い茂る細道。海風を浴びながら、一歩一歩進んでいきます。
【休校書店】
休校中の女木小学校の中に入らせて頂き、図書室を覗くと、色褪せ朽ちた蔵書群が埃にまみれて静かに並んでいました。休校になっていなかったら、メコチャンもきっと読んでいたであろう本です。選書を見ると、この島の人々が次の世代を育もうとする優しい気持ちが感じとれます。本たちは、手垢や匂いを、記憶と共に封じ込めたオブジェのように観えました。この体験から着想を経て、制作したものが「肥やしの本」です。各地に残る休校・閉校の図書室本を分解し、融合させて新たなオブジェとして再構築しました。瀬戸内国際芸術祭を通じて、「肥やしの本」が、陽光・水・土のような養分となり、世界中の人々の心の種に染み渡ることを願っています。いずれ、そこここから新芽が出て、美しい花が咲くことでしょう。来場者の皆さんもメコチャン同様、人工減りゆく地で生まれる新芽なのです。休校書店とは「肥やしの本」という養分を販売するお店です。
【あとがき】
本作品は「人工減りゆく地で生まれる新芽への賛歌」として制作しました。私たちは大分県由布市の(旧)石城西部小学校という閉校舎を利用して作品制作を行っています。女木小学校の休校と同時期である2008年に閉校になった小学校で、かれこれ15年近くアトリエとして使わせて頂いています。私たちの集落にいる子どもは2歳児がひとりだけ。現在の日本では、女木島だけでなく、至る所で過疎化が浮き彫りになっています。人間が減り、学校が無くなっていく事は淋しいですが、悪い事だとは思いません。草木が生い茂るエネルギーは、人間の力を凌ぎ、うるうるとその土地を躍動させているように感じます。また、その土地で暮らしている人々は、数は少ないですが、逞しく生き、次の世代の人間を育てています。それは人口が減り、休校となった学校図書室の本からも伺い知れます。私たちは、いつも、過疎の進んだ土地から、たくさんの養分を受け取り、育てられている気がするのです。