絵本「ココノエのこえ」
2021年制作
大分県九重町内の子ども達へ贈る絵本。 九重町ブックスタート事業で3歳児へ配布。
CL:九重町
大分県九重町が生物多様性ここのえ戦略の中で掲げる理念『つなげよう いのちとりどり 誇りの暮らし』を子どもたちへ継承するため、町民と絵本作家が協力して創り上げた絵本です。九重町で暮らし、生きていく子ども達へ向けて描かれた、町の自己紹介であり、文化・自然観を構築するためのシンボルです。
九重町は多様な自然環境に恵まれた町です。連山が雄大に佇み、透きとおった川が町中に幾筋も流れています。その中で人々は、田を耕し、雑木林を開き、野焼きをし、自然と共に暮らしてきました。しかし1955年以降の高度経済成長による生活の変化、少子高齢化による後継者不足により『農の営み』を中心とした里地里山の生活は段々と衰退していきます。このままでは九重独自の文化・自然観が失われてしまうという危機的な課題が浮上しました。この課題を乗り越えるべく九重町は2017年に「生物多様性ここのえ戦略」を策定し、「つなげよう いのちとりどり 誇りの暮らし」を理念に掲げ、町全体で自然との共生について考え、実践することを促しています。「ココノエのこえ」は、戦略を『絵本』としてビジュアル化し、絵と物語を通じて、子ども達に九重の自然と文化を伝えることを目的に制作されました。
制作の中心となったのは大分出身在住の絵本作家と九重町民有志による絵本策定メンバーです。一年間、町内の様々な場所を取材し、町民との交流を深めていきました。取材をした中に、築200年以上の古民家で自給自足に近い形で暮らす農家さんがいます。その方の自然への造詣と、自然と共存している姿には驚嘆させられました。取材内容は絵本に大きく反映され、町民の思いと言葉が、次世代の子ども達へ伝わるよう物語を考えました。幼児教育は人間の核を形成する点に於いて最も重要です。町内の園で読み語りをすると、子ども達は自分たちの町が絵本になっていることを食い入るように見つめていました。大人になるまで残り続ける体験となれば幸いです。絵本は町内の3・4・5歳児へ無料配布され、反響が大きくなり、ふるさと納税の返礼品登録となりました。九重町の自然や文化を、楽しみながら伝えることのできる絵本として、町内外で広く親しまれています。